「医師の年収は平均1,500万円」という数字を見て、自分の給与と比べて落ち込んだり、逆に実感と合わずに違和感を覚えたりしたことはないでしょうか。
結論から言うと、厚生労働省の統計で公表されている医師の年収は「平均値」であり、中央値(ちょうど真ん中の人の年収)は公的統計の中では確認できません。さらに、診療科別の年収差についても、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では診療科ごとに数値が分かれていないことが、実際にページを確認すると分かります。この記事では、公的データで確認できる範囲と、確認できない範囲を分けて整理します。
- 結論:公的統計で分かるのは「平均」、中央値は公表されていない
- 厚生労働省の統計で分かる医師の年収(job tagのデータ)
- 「平均」と「中央値」はなぜ違うのか——医師の年収で特に注意したい理由
- 診療科別・年齢別の年収は公式統計で分かるのか
- 勤務医と開業医、年収以外に確認したい違い
- 年収を基準に転職を考えるときの視点
- まとめ
- 出典
結論:公的統計で分かるのは「平均」、中央値は公表されていない
先に研究所の結論を示します。
| 知りたいこと | 公的統計で分かるか |
|---|---|
| 医師全体の平均年収 | 分かる(厚生労働省 job tag「内科医」等。令和7年賃金構造基本統計調査) |
| 医師全体の年収の中央値 | job tagなど一般公開されている厚労省の資料では確認できない |
| 診療科別(内科・外科など)の年収差 | job tagの診療科別ページでは数値が同一で、区分されていない |
| 年齢階級別の医師数の構成 | 分かる(医師・歯科医師・薬剤師統計)。ただし年齢別の「年収」までは公表されていない |
つまり、「医師 年収 中央値」で調べている方に正直にお伝えすべきことは、「中央値そのものの公的データは存在しない」という事実です。以下では、代わりに何が分かるのか、平均と中央値がなぜ食い違いやすいのかを順に見ていきます。
厚生労働省の統計で分かる医師の年収(job tagのデータ)
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト(job tag)の「内科医」のページには、令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした次の数値が掲載されています。
| 項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 賃金(年収・平均) | 1,512.3万円 | job tag「内科医」(令和7年賃金構造基本統計調査) |
| 平均年齢 | 45.7歳 | 同上 |
| 月の労働時間 | 158時間 | 同上 |
| 就業者数 | 303,660人 | 同上(令和2年国勢調査をもとに加工) |
| 有効求人倍率 | 0.53倍 | 同上(令和7年度) |
ここで示されている「1,512.3万円」は、調査対象となった医師の給与を合計して人数で割った平均値です。中央値や、給与が低い方から並べたときの分布(四分位数など)は、job tagのページ上には掲載されていません。
所長モヤのひとこと
「平均1,512万円」という数字だけを見て「自分は平均より低い」と焦る必要はありません。平均は年齢や勤務形態が幅広い医師全体をひとまとめにした数字であり、個々の医師の実感とは差が出やすいものです。
「平均」と「中央値」はなぜ違うのか——医師の年収で特に注意したい理由
平均と中央値は、どちらも「代表的な値」を示す統計量ですが、計算方法が異なります。平均は全員の年収を合計して人数で割った値、中央値は年収の低い人から高い人まで順番に並べたときに、ちょうど真ん中に来る人の値です。
一般に、ごく一部に極端に高い値がある集団では、平均が中央値よりも高く出やすいことが知られています。医師の場合、勤務医と開業医が混在し、当直・オンコールの有無や役職(院長・部長など)によって年収の幅が大きいため、こうした偏りが生じやすい集団だと考えられます。ただし、医師の年収分布について、平均と中央値の具体的な差を示す公的データそのものは確認できていないため、「医師の年収は平均より低い人が多いはずだ」という推測を断定的な事実として扱うことは避けるべきです。公的統計で言えるのは、あくまで「平均1,512.3万円」という数字の性質までです。
民間の調査会社や転職サービスが独自に「中央値」や「年代別の年収」を公表している場合がありますが、調査対象者(登録者・利用者など)が医師全体を代表しているとは限りません。数字を見るときは、母集団がどこまで広いか、何年の調査かを確認する姿勢が大切です。
診療科別・年齢別の年収は公式統計で分かるのか
「科別」「年齢別」の年収差も気になるポイントです。研究所でjob tagの診療科別ページを比較したところ、次のことが分かりました。
| job tagのページ | 賃金(年収) | 平均年齢 | 就業者数 |
|---|---|---|---|
| 内科医 | 1,512.3万円 | 45.7歳 | 303,660人 |
| 外科医 | 1,512.3万円 | 45.7歳 | 303,660人 |
| 産婦人科医 | 1,512.3万円 | 45.7歳 | 303,660人 |
診療科ごとにページは分かれているものの、掲載されている数値はすべて同じです。これは、賃金構造基本統計調査の職種区分が「医師」という一つの職種としてまとめられており、内科・外科・産婦人科といった診療科別の賃金データそのものが存在しないためと考えられます。つまり、「診療科によって年収がどれだけ違うか」を公的統計の年収データから比較することは、現時点ではできません。
年齢別についても、job tagや賃金構造基本統計調査の公開資料からは、医師全体の「平均年齢」までしか分かりません。一方で、医師の人数構成については、厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」で確認できます。同調査によると、令和4年12月31日時点の全国の医師数は343,275人で、男性が262,136人(76.4%)、女性が81,139人(23.6%)という構成比が示されています。これは人数の構成であり、年収のデータではない点に注意してください。
所長モヤのひとこと
「◯◯科は年収が高い」という話は転職サイトやSNSでよく見かけますが、公的統計の年収データに診療科別の裏付けがあるわけではありません。気になる診療科の求人を見るときは、提示された給与の内訳(基本給・当直手当・オンコール手当など)を個別に確認する方が確実です。
勤務医と開業医、年収以外に確認したい違い
「医師 年収 勤務医」で調べる方の多くは、今の勤務医としての働き方を続けるか、開業や他施設への転職を考えているのではないでしょうか。年収だけでなく、働き方全体を比較する視点も必要です。
| 比較の軸 | 勤務医 | 開業医・管理職クラス |
|---|---|---|
| 収入の決まり方 | 基本給+当直・オンコール等の手当+勤務先の業績による賞与 | 診療報酬から経費を引いた事業収入(施設により大きく変動) |
| 労働時間の目安 | job tag「内科医」で月158時間(令和7年賃金構造基本統計調査) | 公的な平均データは確認できず、施設運営の負担も加わる |
| 当直・休日対応 | 勤務先の体制に従う(2024年度からの上限規制の対象) | 自院の体制次第で、代わりが見つかるかは地域差が大きい |
2024年度からは、勤務医にも時間外労働の上限規制が適用されるようになりました。この制度の詳しい内容は、研究所の別記事「医師が「辞めたい」と感じたら確認したい厚労省データと相談窓口・選択肢」で整理していますので、当直や勤務時間の負担が気になる方はあわせてご確認ください。
年収を基準に転職を考えるときの視点
平均年収という一つの数字だけで転職の損得を判断するのは難しいですが、求人票に書かれた年収を「平均1,512.3万円」と比べることで、自分の希望条件を言語化する材料にはなります。情報収集の一歩として、医師専門の転職エージェントに希望条件を伝え、紹介される求人の給与内訳(基本給・当直手当・交通費等)を確認する方法があります。
医師の転職を相談できるサービス
求人探しや条件の確認を、専門のアドバイザーに無料で相談できます。登録したからといって、転職を急ぐ必要はありません。
※ 広告リンクです。サービス内容・対象条件は各公式サイトでご確認ください
医師専門の転職エージェントは、運営会社や対応エリアによって特徴が異なります。公式サイトで確認できる事実だけを比較すると、次のようになります。
| 比較項目 | 医師転職ドットコム | MCドクターズネット |
|---|---|---|
| 運営会社 | 株式会社メディウェル | 株式会社メディカル・コンシェルジュ |
| 対応職種 | 医師 | 医師 |
| 拠点・対応エリア | 札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡の7拠点、求人エリアは全国 | 全国26拠点(東京・横浜・名古屋・大阪・福岡など) |
| 公表している求人数 | 常時30,000件以上(公式サイト記載) | 公式に記載なし |
| 雇用形態の対応 | 公式に記載なし | フルタイム・パートタイムのほか、スポット(単発)勤務の紹介も行っている |
研究所では、派遣・単発・スポット勤務への切り替えを積極的にすすめることはしていません。短期的には都合がよく見えても、キャリア形成や収入の安定という観点では、常勤での転職や現職の見直しと比べて検討すべき点が多いためです。どちらのサービスも医師の資格保有者を対象としており、「地方の求人まで広く見たい人」「都市部の求人を中心に比較したい人」など、自分が重視するエリアや施設規模に応じて使い分けるとよいでしょう。エージェント選びの軸をさらに詳しく知りたい方は、研究所の別記事「医師の転職エージェントの選び方」も参考にしてください。
まとめ
医師の年収について公的統計から言えるのは、「令和7年賃金構造基本統計調査による平均年収は1,512.3万円」という事実までです。中央値や診療科別の年収差は、job tagをはじめとする厚生労働省の公開資料では確認できません。年収を転職の判断材料にする場合は、平均という数字の性質を理解したうえで、求人票に書かれた給与の内訳を一つひとつ確認することが、実感に近い比較につながります。
出典
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「内科医」
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「外科医」
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「産婦人科医」
- 厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
- 厚生労働省「医師の働き方改革」
- 株式会社メディウェル「医師の紹介・採用支援」サービス紹介(医師転職ドットコム運営会社)
- 株式会社メディカル・コンシェルジュ 会社概要(MCドクターズネット)
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報の整理です。給与・求人状況は地域や時期で変わるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。