モヤ度を診断する
研究レポート No.013

医師が「辞めたい」と感じたら確認したい厚労省データと相談窓口・選択肢

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当直明けでも外来が続き、医局の人事も読めない。そんな毎日の中で「もう辞めたい」と検索したことがある医師は、少なくないはずです。

結論から言うと、「辞めたい」という気持ち自体は異常なものではなく、医師の勤務実態を示す公的データにも長時間労働の傾向がはっきり表れています。まず大切なのは、今の負担が一時的なものか、構造的なものかを見分けることです。この記事では、厚生労働省のデータをもとに、今の状況を整理するための視点と、相談先・選択肢を研究します。

この研究レポートの目次

  1. 結論:辞める前に、まず「いつ・どれだけ」を確認する
  2. 医師はどれくらい辞めたいと感じているのか——厚労省データで見る勤務実態
  3. 「医師 辞めたい」と検索する人が置かれている状況
  4. 2024年度から始まった医師の働き方改革で何が変わったか
  5. 心身の不調を感じたときに、まず確認したい相談先
  6. 辞める・残る・転科する——選択肢を比較する
  7. まとめ
  8. 出典

結論:辞める前に、まず「いつ・どれだけ」を確認する

「辞めたい」と感じたとき、その場で退職や転科を決めてしまうと、後から「もう少し情報を集めてから判断すればよかった」と感じることがあります。研究所では、次の3点を先に確認することをおすすめします。

確認すること 見るポイント
いつから辞めたいと感じているか 特定の当直・人事異動など一時的な要因か、半年以上続く慢性的な要因か
どれだけ負担が続いているか 週の労働時間、連続勤務日数、休みが取れているか
心身の調子はどうか 睡眠・食欲・集中力に変化がないか(次の章の相談先も参照)

この3点を確認したうえで、「今の環境のまま改善できる余地があるか」「環境を変える必要があるか」を考えると、感情だけで動くよりも後悔の少ない判断につながります。

医師はどれくらい辞めたいと感じているのか——厚労省データで見る勤務実態

「自分だけが辞めたいと感じているのでは」と不安になる方もいますが、公的データを見ると、医師の勤務実態には長時間労働の傾向が構造的に存在します。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)「内科医」のページでは、次の数字が公表されています(診療科ごとにページが分かれており、内科医が代表例として参照できます)。

項目 数値 出典
賃金(年収) 1,512.3万円 job tag「内科医」(令和7年賃金構造基本統計調査をもとに加工)
平均年齢 45.7歳 同上
月の労働時間 158時間 同上
就業者数 303,660人 同上(国勢調査をもとに加工)
有効求人倍率 0.53倍 同上(令和7年度)

さらに、厚生労働省「医師の働き方改革の推進に関する検討会」の参考資料(令和2年)では、病院の常勤勤務医のうち週60時間以上勤務している割合が男性で41%、女性で28%にのぼると示されています。診療科別では、産婦人科で約53%、臨床研修医で約48%、救急科で約48%、外科系で約47%と、半数前後の医師が週60時間以上勤務しているという結果でした。週60時間というのは、1日8時間労働に換算すると土日を含めて休みなく働くのに近い時間です。

所長モヤ

所長モヤのひとこと

この数字はあくまで平均・割合であり、全員が同じ働き方をしているわけではありません。ただ「自分の勤務時間が特別に多いわけではなさそうだ」と感じる方は、負担の原因を職場全体の構造に求めてよいケースが多いです。

「医師 辞めたい」と検索する人が置かれている状況

「医師 辞めたい 知恵袋」のような検索からは、医局の人間関係、当直や呼び出しの負担、専門性を積みにくい環境、収入と労働時間のバランスへの疑問など、さまざまな悩みが浮かび上がります。これらの悩みに共通するのは、「今の勤務先という一つの環境の中でしか選択肢を考えられていない」という点です。

医師という資格そのものを辞める人は多くありませんが、勤務先を変える、診療科を変える(転科)、勤務医から開業医になるなど、資格を活かしたまま環境を変える選択肢は複数あります。日本医師会総合政策研究機構が行った開業医を対象にした調査(2009年公表)では、新規に開業した医師の約6割が「理想の医療の追求」を開業の動機として挙げ、それぞれ約3割が「過重労働」「精神的なストレス」への疲弊も動機の一つとして挙げていました。調査自体は古く、現在の勤務医全体に当てはまるとは言えませんが、「環境を変える」という選択が、理想の追求と負担の軽減の両方から選ばれてきたことがうかがえます。

2024年度から始まった医師の働き方改革で何が変わったか

「今の働き方がこのまま続くのか」という不安に対しては、制度面の変化も確認しておく必要があります。2024年4月から、勤務医にも時間外労働の上限規制が適用されるようになりました。厚生労働省の説明によると、上限は医療機関の区分によって次のように分かれています。

水準 年間の上限(休日労働含む) 対象となる医療機関のイメージ
A水準(原則) 960時間 多くの医療機関に適用される原則的な基準
B水準・連携B水準(特例) 1,860時間 地域医療の確保に必要な救急・高度医療等を担う医療機関、複数医療機関で勤務する医師
C水準(特例) 1,860時間 臨床研修医・専攻医など、育成のために長時間労働が必要となる場合

どの水準も月100時間未満が原則とされ、医療機関には労働時間の把握や、追加的健康確保措置の実施が求められています。具体的には、当直明けなどの連続勤務時間を28時間までに制限し、通常の勤務の間には9時間以上の勤務間インターバルを確保すること、やむを得ずインターバルを確保できなかった場合は後日「代償休息」で補うことが定められています。臨床研修医についてはさらに厳しく、連続勤務時間の上限が15時間までとされています。特例水準であっても年1,860時間が「上限」であって「目標」ではない点は、厚生労働省の資料でも繰り返し説明されています。自分の勤務先がどの水準に該当するか、追加的健康確保措置が実際に運用されているかは、院内の労務担当や医療勤務環境改善支援センターに確認すると分かります。もし当直明けに休みなく次の勤務に入る状態が続いているなら、それは制度上見直されるべき働き方である可能性があります。

心身の不調を感じたときに、まず確認したい相談先

「辞めたい」という気持ちの背景に、強い疲労感や不眠、気分の落ち込みがある場合は、まず心身の状態を確認することが優先されます。転職や退職は、心身の不調そのものを解決する手段ではありません。

厚生労働省が運営する「こころの耳」(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)では、電話・SNS・メールによる無料の相談窓口が案内されています。電話相談は平日17時〜22時、土日10時〜16時(祝日・年末年始を除く)、メール相談は24時間受付です。匿名でも相談でき、医師に限らず労働者全般が利用できます。なお、日本医師会が過去に実施していた勤務医向けの電話・メール健康相談は、公式サイトで「終了しています」と案内されており、現在は利用できません。相談先を探す際は、こころの耳や、お住まいの地域の産業医・保健所など、現在も運営されている窓口を確認してください。

所長モヤ

所長モヤのひとこと

「相談するほどの状態ではない」と感じていても、睡眠や食欲に変化が出ている場合は、一度専門の窓口に話すだけでも状況を整理しやすくなります。転職の検討は、心身を整えたあとで構いません。

辞める・残る・転科する——選択肢を比較する

心身の状態を確認したうえで、実際に環境を変えるかどうかを考えるときは、次の3つの方向性で整理すると判断しやすくなります。

選択肢 向いているケース 確認したいこと
今の勤務先に残る 負担の原因が一時的な人事・当直体制にある場合 労務担当や上席に、働き方改革の上限規制を踏まえた体制の見直しを相談できるか
勤務先を変える(転職) 診療科や勤務形態は変えず、労働条件や職場の雰囲気を変えたい場合 希望する勤務地・診療科の求人を扱っているか、対応エリアを公式サイトで確認
診療科を変える(転科) 専門性や診療内容そのものに違和感がある場合 後期研修の受け入れ体制や、専門医取得までの期間

勤務先を変える場合、情報収集の第一歩としては、医師専門の転職エージェントに希望条件を伝え、紹介される求人の傾向を確かめる方法があります。求職者側に費用が発生しない仕組みで運営されているため、情報を集めるだけでも負担は大きくありません。

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エージェントごとに対応エリアや得意分野が異なるため、公式に公表されている情報だけで比較することが大切です。どのような軸で比較すればよいかは、研究所の別記事「医師の転職エージェントの選び方」で詳しく整理しています。

なお、研究所では、派遣・単発・スポット勤務への切り替えを積極的にすすめることはしていません。短期的には負担が軽く見えても、将来のキャリア形成や収入の安定という観点では、常勤での転職や現職の見直しと比べて検討すべき点が多いためです。

まとめ

医師の「辞めたい」という気持ちは、厚生労働省のデータが示す長時間労働の実態からも、特別なものではないことが分かります。大切なのは、感情だけで決めるのではなく、心身の状態を確認し、制度面の変化(2024年度からの上限規制)を踏まえたうえで、残る・転科する・転職するという選択肢を比較することです。まずは気になる相談窓口や公式情報を確認するところから始めてみてください。

出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報の整理です。給与・求人状況は地域や時期で変わるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。