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研究レポート No.038

臨床工学技士の転職はなぜ難しいと言われる?実情とキャリアの選び方

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「人工心肺や血液浄化の現場で経験を積んできたのに、いざ転職サイトを見ても求人が少なくて動けない」。臨床工学技士の方から、こうした相談が当研究所にも届きます。

先に結論です。臨床工学技士の転職が「難しい」と感じる正体は、求人そのものが無いことではなく、業務分野が呼吸治療・人工心肺・血液浄化・手術室業務など細かく分かれていて、自分の経験と施設が求める経験が一致しにくいことにあります。この記事では、厚生労働省と日本臨床工学技士会の公的な情報で市場を確認したうえで、「難しい」と言われる背景、他職種への転職の考え方、エージェントの使い方までを研究所として整理します。

この研究レポートの目次

  1. 結論:転職が「難しい」と感じる正体は、業務分野の細かさ
  2. 臨床工学技士の転職市場をデータで確認する
  3. 「転職が難しい」と言われる背景を整理する
  4. 転職を考えたときに棚卸ししておきたいこと
  5. 他職種への転職は可能か:病院以外の選択肢を整理する
  6. 転職エージェントを使うときの考え方
  7. まとめ
  8. 出典

結論:転職が「難しい」と感じる正体は、業務分野の細かさ

臨床工学技士の転職は「難しい」というイメージを持たれがちですが、厚生労働省の統計を見る限り、求人そのものが枯渇しているわけではありません。令和7年度のハローワーク求人統計では、臨床工学技士の有効求人倍率は1.73倍です。求職者1人に対して求人が1.73件ある計算で、求人がまったくない職種ではありません。

難しさの正体は、求人数の少なさよりも「自分が担当してきた業務と、施設が求める業務の一致」にあります。日本臨床工学技士会によると、臨床工学技士の業務は呼吸治療業務・人工心肺業務・血液浄化業務・手術室業務・集中治療業務・心血管カテーテル業務・高気圧酸素業務・ペースメーカ/ICD業務・医療機器管理業務など多岐にわたります。同じ「臨床工学技士」の求人でも、施設の規模や診療科によって扱う業務・機器が異なるため、経験が一致する求人を見つけるまでに時間がかかりやすいのです。

臨床工学技士の転職市場をデータで確認する

まず、臨床工学技士の「相場」を公的データで確認しておきましょう。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、令和7年賃金構造基本統計調査などをもとに、次の数字が公表されています。

項目 全国の値 出典
賃金(年収) 454.2万円 令和7年賃金構造基本統計調査(job tagで加工)
平均年齢 37.6歳 令和7年賃金構造基本統計調査(同上)
月の労働時間 159時間 令和7年賃金構造基本統計調査(同上)
就業者数 163,750人 令和2年国勢調査(job tagで加工)
ハローワークの求人賃金(月額) 25.0万円 令和7年度ハローワーク求人統計(job tagで加工)
有効求人倍率 1.73倍 令和7年度ハローワーク求人統計(同上)

注目したいのは、ハローワークの求人賃金(月額25.0万円)と、統計上の年収454.2万円に差があることです。年収454.2万円は賞与や残業・オンコール手当まで含み、経験を積んだ人も含めた平均です。求人票の月給だけを見ると、今の給与より低く感じることがありますが、手当や賞与まで含めて比べる必要があります。

就業先についても、job tagでは総合病院や透析クリニックに加えて、医療機器メーカーが挙げられています。病院・クリニック以外の就業先も視野に入れると、求人の選択肢は広がります。

所長モヤ

所長モヤのひとこと

求人倍率1.73倍は全国平均です。都道府県や施設の規模によって、実際の求人の出方はかなり違います。「自分の地域ではどうか」は、求人サイトで実際の件数を見るのが一番確実です。

「転職が難しい」と言われる背景を整理する

知恵袋や転職関連の記事でよく挙げられる「難しさ」の背景を、研究所として整理しました。公的情報で確認できる部分と、業務の性質から見える傾向を分けて書いています。

よく言われる背景 研究所の整理
求人数が少ない 有効求人倍率は1.73倍で、求人自体はある。ただし就業者数は163,750人(令和2年国勢調査)で、看護師など就業者数の多い職種に比べると求人の絶対数は少なめになりやすい
業務分野が細かく分かれる 呼吸治療・人工心肺・血液浄化・手術室業務・集中治療・心血管カテーテル・高気圧酸素・ペースメーカ/ICD業務・医療機器管理業務など、業務の幅が広い(日本臨床工学技士会)。施設によって経験できる分野が異なり、応募先が求める業務と一致しないと選考が通りにくい
施設ごとに扱う機器が違う 人工呼吸器・人工透析装置・人工心肺装置など、機種やメーカーが施設によって異なる。操作経験がそのまま次の職場で通用するとは限らない
緊急時対応が必要になる業務がある 人工呼吸器や血液浄化装置など生命維持管理装置を扱うため、稼働中の異常対応が求められる場面がある(日本臨床工学技士会の業務説明)。転職先でも同様の対応体制かどうかは、面談で確認が必要
即戦力採用が多い 中途採用では、特定の装置の操作経験や、当直・オンコールの経験が重視されやすい傾向がある

「分野が細かい」というのは裏を返せば、自分が強みを持つ分野(人工心肺業務に強い、血液浄化業務に強い、など)を明確にできれば、その分野を求める施設には高く評価されやすいということでもあります。「臨床工学技士全般」で探すのではなく、「どの業務で評価されたいか」を先に決めておくことが、求人の探しやすさに関わります。

転職を考えたときに棚卸ししておきたいこと

臨床工学技士の経験は、同じ年数でも「どの業務を、どの機器で、どれだけ担当したか」で評価が変わります。応募前や面談前に、次の4点を整理しておくと、紹介される求人の精度が変わります。

整理しておく項目 書き方の例
担当してきた業務 呼吸治療・人工心肺業務・血液浄化業務・手術室業務・医療機器管理業務など
扱える機器 人工呼吸器・人工透析装置・人工心肺装置など、操作・保守の経験がある機種
取得している認定資格 透析技術認定士、体外循環技術認定士など、学会認定資格があれば名称と取得年
勤務体制の経験 当直・オンコールの有無、緊急時対応の経験、1人配置か複数配置か

経験年数が浅い場合、応募できる求人の幅は狭くなりやすいのは事実です。ただし、教育体制を整えている施設や、ポテンシャルを見て採用する施設もあります。「経験が少ないから無理」と決めつけず、求人票の「未経験可」「研修あり」といった記載や、エージェントへの相談を通じて、教育体制のある求人を探す方法もあります。

所長モヤ

所長モヤのひとこと

「何年目か」より「どの業務で、どれだけ任されてきたか」を1行で言えることのほうが、採用側には伝わりやすいです。

他職種への転職は可能か:病院以外の選択肢を整理する

「臨床工学技士 転職 他職種」と調べる方の多くは、病院の中で部署を変えるだけでなく、臨床の現場そのものから離れる選択肢を探しています。job tagでも、臨床工学技士の就業先として医療機器メーカーが挙げられており、病院以外の働き方は制度上も想定されています。

選択肢 活かせる経験 面談で確認したいこと
医療機器メーカー(学術・サービスエンジニア職) 機器の操作・保守点検の経験、トラブル対応の経験 学術職かフィールドエンジニア職か、出張や転勤の頻度、臨床経験がどう評価されるか
医療機器メーカー(営業職) 臨床現場での機器の使われ方を理解していること 営業未経験でも応募できる範囲か、インセンティブの仕組み、同行営業の期間
医療機器の保守管理を専門とする企業 複数機種の保守点検・点検記録の経験 対応する機種の範囲、訪問先の施設数、オンコール対応の有無
専門学校などの教育機関 臨床経験に基づく指導力 必要な勤務年数や資格、臨床と兼務できるか

どの選択肢でも共通するのは、「どの機器を、どれだけ扱ってきたか」を具体的に言葉にできるかどうかです。臨床工学技士としての知識を前提にしつつも、業務内容は臨床の現場とは異なるため、募集要項で「臨床経験をどう使うか」を具体的に確認することが欠かせません。

なお、当直やオンコールの負担、人手不足などで心身の調子を崩している場合は、転職を考える前に、まずは今の職場の産業医や相談窓口、あるいは地域の医療機関・こころの健康相談窓口に相談することも大切な選択肢です。心身の不調は、転職だけで解決できるとは限りません。無理をして動くより、相談しながら次の一歩を決めるほうが、結果的に長く続けられる働き方につながります。

転職エージェントを使うときの考え方

臨床工学技士の求人は分野が細かく分かれる分、自分で探すだけでなく、医療技師の事情に詳しい専門型エージェントを使うと、合う求人の見つけやすさが変わります。参考に、臨床工学技士が対応職種に含まれているサービスを、公式サイトに記載されている情報だけで整理しました。

サービス 運営 対象職種 雇用形態 職業紹介の許可番号
レバウェル医療技師 Levwell Co., Ltd. 臨床検査技師・臨床工学技士・放射線技師 公式サイトに具体的な記載なし(正職員希望者向けの訴求) 厚生労働大臣許可 13-ユ-309623
マイナビコメディカル 株式会社マイナビ 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・臨床検査技師・臨床工学技士・診療放射線技師・栄養士など 正社員・契約社員・非常勤まで相談可 公式サイトに記載なし

臨床工学技士を専門に扱うレバウェル医療技師のような専門型は、担当者が人工心肺業務や血液浄化業務といった臨床工学技士特有の業務を理解していることが多く、細かい希望を伝えやすいのが特徴です。一方、マイナビコメディカルのような総合型は、理学療法士や看護師なども含めた医療職全般を扱う分、医療機器メーカーなど臨床から離れた求人の情報にも触れやすくなります。より多くのサービスを比較したい場合は、別記事「臨床工学技士の転職サイトおすすめ」でタイプ別に整理しています。

次の一歩としては、まず専門型に1つ登録して、自分の経験でどんな求人が紹介されるかを確かめるのが近道です。紹介が少ない、あるいはメーカーなど選択肢を広げたいと感じたら、総合型や求人サイトを足していきます。登録は2〜3社までにとどめ、希望条件(担当業務・オンコールの有無・勤務地など)に優先順位をつけて伝えると、紹介の精度が上がります。

まとめ

臨床工学技士の転職は、求人そのものが無いわけではなく、業務分野が細かく分かれているために「経験が一致する求人」を見つけるのに時間がかかりやすい、というのが実際のところです。

焦って決めず、在職中に情報を集めるところから始めてみてください。

出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報の整理です。給与・求人状況は地域や時期で変わるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。