「保育士を辞めたい」「自分はこの仕事に向いていないのかもしれない」。そう感じながら検索している方は多いと思います。先に結論を書きます。「向いていない」と感じる気持ちは、仕事の内容そのものへの違和感なのか、今の職場の環境への不満なのかを分けて考えると整理しやすくなります。東京都の実態調査でも、現職の保育士が「辞めたい」と感じる理由と、実際に過去に辞めた保育士の理由は、上位の内容が異なっています。この記事では、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)と東京都保育士実態調査のデータから、この2つを分けて考えるための材料を研究所が整理します。
- 結論:「向いていない」は2つの問いに分けて考える
- 保育士の仕事に「向いていない」と感じやすい理由(job tagのデータから)
- 実際に「辞めたい」と思っている保育士はどれくらいいるのか
- 「辞めたいと思う理由」と「実際に辞めた理由」は違う
- 心身の不調があるときは、転職だけを解決策にしない
- 「辞めたい」気持ちを整理して、次の一歩を考える
- まとめ
- 出典
結論:「向いていない」は2つの問いに分けて考える
「保育士 辞めたい 向いてない」で検索する人の多くは、「この仕事を続ける適性が自分にないのでは」という不安と、「今の職場がつらい」という現実が入り混じった状態にあると思います。この2つは、原因も対処法も異なります。
ひとつは、保育士という仕事そのものに求められる適性との食い違いです。子どもや保護者との継続的な対人関わり、体力を使う身体接触など、保育士という職業に共通して求められる仕事の性質があります。もうひとつは、今の職場固有の環境の問題です。人手不足による仕事量の多さ、特定の上司や同僚との関係、賃金水準などは、同じ保育士の仕事でも職場によって差があります。「向いていない」と感じたときは、つらさの正体がどちらに近いかを考えることが、次の一歩を決める手がかりになります。
所長モヤのひとこと
「向いていない」と感じること自体は、能力の欠陥を意味しません。まずは「具体的に何がつらいのか」を書き出してみると、仕事内容の問題か、職場の問題かが見えてきます。
保育士の仕事に「向いていない」と感じやすい理由(job tagのデータから)
保育士は児童福祉法第18条の4に基づく国家資格で、指定保育士養成施設の卒業または保育士試験合格によって資格を取得し、都道府県への登録を経て保育士証の交付を受けた者が名乗れる職業です。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、保育士という仕事に求められる知識・技能の水準を5段階で示しており、「他者との身体的近接」が4.6、「他者とのかかわり」と「傾聴力」がそれぞれ4.3と、いずれも高い水準で求められる項目として挙げられています。
これは、保育士という仕事が、事務作業や単独作業が中心の仕事に比べて、子ども一人ひとりとの身体的・継続的な関わりを前提に設計された職業であることを示しています。もし「向いていない」と感じる内容が、こうした対人・身体的な関わりそのものに対する強い苦手意識であれば、それは職場を変えても解消しにくい、仕事内容との適性の問題である可能性があります。一方で、「特定の同僚との関係がつらい」「今の園の仕事量が多すぎる」といった内容であれば、次の章で見るように、職場を変えることで状況が変わる可能性がある問題です。
| 項目 | データ |
|---|---|
| 賃金(年収の目安) | 427.6万円 |
| ハローワーク求人賃金(月額) | 23.9万円 |
| 有効求人倍率 | 3.37倍 |
| 就業者数 | 634,080人 |
| 平均年齢 | 40.3歳 |
| 月間就業時間 | 163時間 |
出典はいずれも厚生労働省job tag「保育士」(賃金は令和7年賃金構造基本統計調査、求人賃金・有効求人倍率は令和7年度ハローワーク求人統計、就業者数は令和2年国勢調査)です。有効求人倍率3.37倍は、保育士1人に対して求人が3件以上ある計算で、人手不足が続いている業界であることを示しています。
実際に「辞めたい」と思っている保育士はどれくらいいるのか
「辞めたい」と感じているのは自分だけではないか、という不安を持つ人もいると思います。東京都福祉局が実施した「令和4年度東京都保育士実態調査」は、平成29年4月から令和4年3月までに東京都に保育士登録した者等52,856人を対象に、令和4年7月25日から8月14日にかけて郵送配布・インターネット回収の方法で行われ、有効回収数18,239件(有効回収率39.7%)という規模の調査です。
この調査では、現職の保育士のうち「今後も保育士として働き続けたい」と回答した人が約8割にのぼる一方、「退職を考えている」と回答した人は21.3%でした。つまり、「辞めたい」という気持ちを持つこと自体は保育士の中で珍しいことではありませんが、実際に退職を検討する段階まで至っている人は、全体の2割強にとどまります。「辞めたい」と感じる気持ちと、実際に退職するかどうかの判断の間には、まだ検討の余地があるということです。
所長モヤのひとこと
「辞めたい」と思う人は約2割強。多数派ではありませんが、少数派というわけでもありません。同じ悩みを抱える人が一定数いるという前提で、自分の状況を見てみてください。
「辞めたいと思う理由」と「実際に辞めた理由」は違う
同じ令和4年度東京都保育士実態調査では、現職の保育士に「退職したいと考える理由」を複数回答で尋ねています。結果は次のとおりです。
| 現職の保育士が退職したいと考える理由(複数回答) | 割合 |
|---|---|
| 給料が安い | 61.6% |
| 仕事量が多い | 54.0% |
| 労働時間が長い | 35.4% |
| 職場の人間関係 | 30.1% |
一方、同じ調査で過去に保育士として就業していたが現在は離職している人に、実際に退職した理由を複数回答で尋ねた結果は次のとおりです。
| 過去に保育士として就業していた人の退職理由(複数回答) | 割合 |
|---|---|
| 職場の人間関係 | 31.5% |
| 仕事量が多い | 23.1% |
| 給料が安い | 22.1% |
2つの結果を比べると、現職者が「辞めたい理由」として最も多く挙げるのは「給料が安い」ですが、実際に辞めた人の理由では「職場の人間関係」が最多になっています。給料や仕事量の多さは保育士という仕事全体に共通する構造的な不満として常に高い割合で挙がる一方、実際に退職という行動に結びつきやすいのは、職場固有の人間関係の問題である可能性がうかがえます。もし今感じている「辞めたい」理由が、特定の人との関係性に強く結びついているなら、それは職場を変えることで状況が変わりやすい種類の問題かもしれません。反対に、給料や仕事量への不満が中心であれば、同じ保育士の仕事でも、求人の出やすさや待遇の違う職場を比較してみる価値があります。
心身の不調があるときは、転職だけを解決策にしない
「辞めたい」という気持ちの背景に、強い疲労感や不眠、気分の落ち込みなど心身の不調がある場合は、転職を考える前に、専門の相談窓口に話してみることをおすすめします。厚生労働省の「こころの耳」は、働く人のメンタルヘルスに関する電話・SNS・メール相談を匿名・無料で受け付けている公式サイトです。職場の人間関係の悩みがハラスメントに関わる場合は、厚生労働省委託事業の「ハラスメント悩み相談室」でも相談できます。心身の負担を一人で抱え込まず、まず相談してから今後を考えることが、結果的に落ち着いた判断につながります。
「辞めたい」気持ちを整理して、次の一歩を考える
ここまで見てきたように、「辞めたい」理由が仕事内容そのものへの適性の問題か、職場固有の環境の問題かを分けて考えると、次に取るべき行動が見えてきます。仕事内容そのものに強い苦手意識がある場合は、保育士資格を活かしながら働き方の幅を広げる方法も含めて、時間をかけて検討する価値があります。職場固有の問題であれば、同じ保育士の仕事のまま、別の園や施設の求人情報を確認してみることが次の一歩になります。保育士の転職サービスにはタイプの違いがあり、対応エリアや求人数、職業紹介事業の許可番号など公式に確認できる情報を比較する方法を、研究所の別記事「保育士の転職エージェント徹底比較」で整理しています。
どの方法を選ぶ場合も、「辞めたい理由」を具体的な言葉にしてから相談や応募に進むと、同じ悩みを繰り返す転職になりにくくなります。
まとめ
保育士の仕事に「向いていない」「辞めたい」と感じることは、個人の資質だけで説明できる問題ではありません。
- 保育士は児童福祉法に基づく国家資格で、job tagでは対人関わりや身体的近接への高い適性が求められる仕事とされている
- 令和4年度東京都保育士実態調査では、現職保育士の約8割が継続意向を示す一方、21.3%が退職を検討している
- 現職者の「辞めたい理由」の最多は「給料が安い」(61.6%)だが、実際に辞めた人の理由の最多は「職場の人間関係」(31.5%)で、傾向が異なる
- 保育士の有効求人倍率は3.37倍(job tag)で、人手不足が続いている業界である
- 心身の不調がある場合は、転職の前に「こころの耳」などの相談窓口も活用する
「向いていないかどうか」を自分だけで判断しようとせず、データで現状を確認しながら、仕事内容と職場環境のどちらが自分にとっての課題なのかを整理してみてください。
出典
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「保育士」(2026年10月閲覧)
- 東京都福祉局「東京都保育士実態調査 結果の概要」(令和4年度)(2026年10月閲覧)
- 保育士登録事務処理センター(公益社団法人日本保育協会)「保育士の定義」(2026年10月閲覧)
- 厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」(2026年10月閲覧)
- 厚生労働省委託事業「ハラスメント悩み相談室」(2026年10月閲覧)
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報の整理です。給与・求人状況は地域や時期で変わるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。